【最強のふたり】人間関係について考えさせられる名作。
はぁ…
どうなさいました?
私、介護士なんですが、患者さんとどう接すればいいのかわからなくなってしまって…
それでは、こちらの映画はいかがでしょう。
【最強のふたり】
2011年、113分キャスト:フランソワ・クリュゼ
オマール・シー
アンヌ・ル・ニ
オドレイ・フルーノ
受賞タイトル:第36回日本アカデミー賞
第24回東京国際映画祭
制作費:€9,500,000
興行収入:€346,000,000
あらすじ
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後遺症の四肢麻痺により
車椅子生活となった富豪フィリップ。
その介護者に採用された
スラム街出身の黒人ドリス。
相反するふたりの間には
次第に強い友情が芽生えていく。
障害者を題材にした映画って、正直苦手なんですよね…
この映画は、実話をもとにしたものです。
私はこの映画を通して「人との関わり方」を学びました。
実話なんだ。
ソムさんが進めるなら、見てみようかな。
お楽しみいただけると幸いです。
ーーーーー 翌日 ーーーーー
ソムさん!
「最強のふたり」よかったです!
それは良かったです。
どの場面がお気に召しましたか?
たくさんあるのですが、
特にお気に入りの場面が5つあります。聞いていただけますか?
もちろん喜んで。
ーーーーー ネタバレ注意 ーーーーー
1、履歴書なしの面接。
パラグライダーによる事故で、四肢麻痺を患った富豪フィリップ。介護者を雇うために、面接を行っていた。面接では履歴書を一歳見ることなく行うのが、フィリップの流儀だった。
フィリップ役をフランソワ・クリュゼが演じているが、クリュゼ氏は「動き」で演技をすることを得意とし、セリフによる表現が苦手だという。そのため、体の不自由なフィリップ役は難しかったとコメントしているが、今作のクリュゼの演技は、世界的に見ても高く評価されている。
フィリップの面接に現れた、オマール・シー演じるスラム街出身の黒人ドリス。ドリスは、目的を持つことなく、1日1日を生きることに必死だった。
そんなドリスの姿を見て、フィリップは共鳴するものを感じ「君に1ヶ月の使用期間を与えよう。2週間ももつまい」と、条件付きで採用することになる。
この日から、フィリップとドリスの不思議な介護生活が始まります。
富豪と貧民、障害者と健常者、人種…
ふたりの対峙する関係性が、より意味深いものになっているように感じますね。
フランソワ・クリュゼとオマール・シーは、実際にフィリップ本人と会話を重ねて、役に入り込んだだけあって、より気持ちの入った演技となっていますね。。
2、芽生え始める絆。
介護を経験したことのないドリスは苦戦します。
シャンプーで足を洗い、頭に足用クリームを塗って「このシャンプー泡立たないよ」と、助けを求める始末。その上、フィリップに対して「同情」することは全くない様子で、常におちょくった態度で接します。
しかし、フィリップは、そんなドリスの態度に怒りを覚えるどころか、むしろ喜びを感じ、日常に笑顔が増えていきます。「障害者」として、親族や世間から見られることに、嫌気がさしていたのかもしれませんね。
フィリップとドリスが舞台を見に行った時、緑の衣装を身にまとった男性が叫んでいるのを見て、ドリスが「あの人どうしちゃったの?あれ木?」と爆笑しているのを見て、思わず私も笑ってしまいました。ドリスの態度が正しいか正しくないかは別として、世間体より自分の心に正直に生きるドリスの姿に、フィリップだけでなく誰しもが好意を抱くと思います。
私、失敗したらドリスのようにはいられない。
いつも落ち込んで、顔に出てしまう…
バランスなんだと思います。
みんながドリスのような性格では、世界は大変なことになります。
ただ、あなたが今、ドリスの要素を必要としているなら、少しだけ取り入れてみるのもいいかもしれませんね。
3、苦渋の決断。
ドリスの弟が、つるんでいた仲間と揉めて、警察沙汰になってしまう。その事実を知ったフィリップは、ドリスに対して「弟にしつけが必要だろう。介護は大丈夫だから、家族のもとに帰りなさい」と言った。フィリップは不本意ではあったが、ドリスのことを考えるとそれが最善の対応だと考えた。
ドリスは、フィリップとの生活で教養が身につき、家族とも仲間ともうまくいくようになった。一方フィリップは、ドリスの代わりが見つからず苦労します。
採用したどの介護士も、フィリップのことを「障害者」「富豪」「権威者」としか見ません。そのため、退屈を感じ、息が詰まり始めるフィリップ。
ドリスの存在が、どれだけ心の支えになっていたのかを、痛感させられるフィリップの姿が、とても印象的です。
ドリスのことを思ったフィリップの行動が、フィリップ自身を苦しめることになったんだね。
そうですね。
お互いがお互いを思いやる関係性に、心を動かされますね。
4、再開したふたり。
ある夜、発作を起こしたフィリップのもとに駆けつけた介護士に対して「来るな!出ていけ!」と、荒い口調で部屋から追い出すフィリップ。家政婦のイヴォンヌが、ドリスに連絡をして助けを求めます。
すぐに駆けつけたドリスは、髭をボサボサに生やしたフィリップの姿を見て「どうしたその顔。セルピコ?笑」と、相変わらず明るいジョークを飛ばします。
屋敷から離れた別荘にふたりで移動し、ドリスはフィリップの髭を剃ってあげます。
ここで、ただ髭を剃らないのがドリスの流儀です。浮浪者のような髭にしてみたり、兵隊のような髭にしてみたり、ヒトラーのような髭にしてみたり…思う存分、フィリップをからかうドリスを見て、自然と笑顔を取り戻すフィリップの姿に、見ているこちらまで笑顔になります。
ドリスの接し方って、絶妙なんだよなー。
純粋で嫌味がないから、見ていても不快に感じないのが不思議。
お互いを理解しあった関係性だからこそ、こういった空気が生まれるのでしょうね。
関係性の構築がなければ、いじめやハラスメントになりかねませんから、そこは注意しなければいけませんね。
5、実在するふたり。
この映画は、実在する人物をテーマにして、作成されています。
実話の二人はフィリップ・ポゾ・ディ・ボルゴ氏とアブデル・ヤスミン・セルー氏。フィリップは名前も境遇も劇中の役柄とほぼ同じですが、ドリスのモデルであるアブデル氏は、アルジェリア出身のアラブ系移民です。
実際のアブデル氏の生い立ちやフィリップさんと出会うまでの暮らしぶりは、映画のドリスの何十倍もひどく、浮浪者同然だったとのこと。劇中、前科者を雇うフィリップを心配する近しい人たちの姿が描かれますが、実際はそれ以上の反発があったそうです。
それでも、不採用になるつもりで臨んだ面接でフィリップさんと出会ったアブデルさんは、ものの1時間で仲良くなれたと語っています。
「事実は小説より奇なり」ですね。
また、2019年にはハリウッド版最強のふたり「THE UPSIDE 最強のふたり」が公開され、日本でも多くの方の注目を浴びた。